序章 ーjoshoー

料理レシピと書評

『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』

 

本の要約まとめです!

 

 

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プロローグ 経済学の解説書とは正反対の経済の本

・目の前の混乱から離れて世界を見つめ直す

・資本主義を解き明かす

 

第1章 なぜ、こんなに「格差」があるのか?――答えは1万年以上前にさかのぼる

 

市場と経済は異なる→市場は交換の場所

 

8万2千年前、人類は言葉を発するようになった

1万2千年前、土地を耕すことに成功した

 

土地を耕さなければ生きていけない場所で農耕が発達した

より効率のいい農耕の技術が生まれた

農作物の生産によって、はじめて本物の経済の基本になる要素が生まれた→「余剰」

 

農作物の余剰が人類を変えるような偉大な制度を生み出した

偉大な制度→文字、債務、通貨、国家、官僚制、軍隊、宗教、テクノロジーなど

 

・なぜオーストラリアを侵略したのがイギリスなのか

帝国主義の大国がユーラシア大陸に集中していたのか

ユーラシア大陸の土地と気候が農耕と余剰を生み出し、余剰がその他のものを生み出し、国家の支配者が軍隊を持ち、武器を装備できるようになった

オーストラリアのような場所では余剰は生まれなかった

 

・なぜ、アフリカから強国が出てこなかったのか?

→アフリカは気候が極端なため農耕経済を発展させても広がらなかった

 

アフリカとオーストラリアと南北アメリカがヨーロッパ人の植民地になったのは、地理的な環境が理由だった

 

 

 

 

 

第2章 市場社会の誕生――いくらで売れるか、それがすべて

 

・ふたつの価値――経済学者はすべてを「値段」で測る

 

「交換価値」…市場で何かを交換するときの価値を示している

「経験価値」…お笑い、ダイビング、笑い合うことなど

 

いまはすべてのものに値段がつき、交換価値で測れると思われている

 

市場経済の始まり

生産するのに必要な要素は3つ

①「生産手段」…原材料、道具機械、インフラ

②「土地」…農場、工場、作業場、事務所

③「労働者」

 

この3要素が商品になり交換価値を持つようになった時に市場社会がはじまった

 

 

世界が変わり始めたのはヨーロッパで造船が発達し、羅針盤が利用され、航海手段が改善されたこと。

ヨーロッパの船乗りは新しい航海ルートを発見し、グローバル貿易につながった。

 

領主たちがグローバル市場で売れるものを作らせるために「囲い込み」という改革をおこなった

 

代々同じ土地に暮らし領主に仕えていた農奴たちが突然家を追い出された

農民は追い出され、土地も道具も持たないため労働力を差し出して生きていくしかなかった

労働市場のはじまり

 

農奴を追い出した領主は自分たちで生産するかわりに土地を貸し出してその土地でできる羊毛の価値によって賃料を決めればいいと気づいた

→土地の商品化のはじまり

 

産業革命の最初の具体的な形が、工場であった

18世紀の後半に蒸気機関が登場し、産業革命が到来した

 

農業革命が生んだ格差は、産業革命によってものすごい規模に拡大した

 

 

 

 

 

第3章 「利益」と「借金」のウエディングマーチ――すべての富が借金から生まれる世界

 

余剰は経済が存在するための前提条件

 

封建時代は 生産→分配→債権・債務 という流れで機能していた

 

しかし土地と労働が商品になると大転換が起きた

生産後に余剰を分配するのではなく、生産前に分配がはじまった

 

土地を追われた農奴は領主から土地を借り、作物の生産を管理し、商品を売ってお金にし、領主に土地の賃料を払い、働き手たちに賃金を払うようになった

=元農奴は起業家のようになった

 

事業を起こすには資金が必要

→借金が生産プロセスに欠かせない潤滑油になった

 利益自体が目的になったのもこの時

 

産業革命の原動力は石炭ではなく借金だった

貴族とは違い、誰でも起業家にはなれた

起業家になったらリソースと顧客と生き残りをかけて争い始めた

こうして利益自体が目的になっていった

 

 

第4章 「金融」の黒魔術――こうしてお金は生まれては消える

 

 

現代の経済は循環しなければ崩壊してしまう

市場経済が循環能力を失う原因は「金融機関」である

 

金融機関は自由に金利を設定できるようになり、巨大な力を持ちはじめた

 

銀行はお金を貸すことでリスクを負う代わりに、そのリスクに対して利子と手数料を徴収する

より多くの人に多くのお金を貸すことで経済に回るお金は多くなり銀行も潤う

 

1920年ごろ金融業の歯車が狂った

ふたつの変化

産業革命によって市場社会の経済が拡大し、急激な成長を支えるために借金の額が爆発的に増大した

・事業がうまくいかない場合にも銀行が被害を被らない方法が生まれた

 貸し付けの債権を小口に分割して投資家に販売した

 

金融危機

借金を背負った起業家は返済できなくなり、工場を閉鎖する

多くの企業が破綻し失業者が発生する、買い物をしていた店も傾く

銀行は返済不能のローンを抱え込むことになる

銀行が苦しいという噂が広まる、預金を引き出す人が増える

銀行は何もないところから生み出したお金をローンとして貸し付けているので全ての引き出しに応じるだけの現金がない

銀行の現金は底をついたという風説が流れ、取り付け騒ぎに発展する

 

 

利益と富を生み出す仕組みが、金融危機と破綻も生み出す

金融危機の後に来るのが不況

借金があり返済できない⇨銀行が破綻し、預金者は預金を失う⇨お金持ちも支出を抑える

 

経済が破滅的な循環にはまってしまったら助けになるのは国家である

 

国家が所有する銀行「中央銀行」、お客さんは銀行

中央銀行がそれぞれの銀行口座に数字を付け加えることができる(どこからともなくお金を生み出す)

 

中央銀行の目的・・・銀行を救い、破滅されそうな経済を元に戻すこと

 

 

銀行は市場経済を不安定にするが、その根本原因は別にある

その原因を探るとふたつの「商品」の奇妙な性質に行き着く

それが労働力とマネー

 

 

 

 

 

 

第5章 世にも奇妙な「労働力」と「マネー」の世界――悪魔が潜むふたつの市

 

労働者を雇うかどうかはふたつの交換価値の比較で決まる

・労働者が製造に貢献することで増える売上という交換価値

・雇うことで発生する給料とその他の費用という交換価値

先行きを明るいと感じ消費者がお金を払ってくれると信じられたら失業者を雇い入れる

 

失業否定派は間違っている

労働市場は労働力の交換価値だけで動くものではない

経済全体の先行きに対する楽観と悲観に左右される

 

 

市場経済には2種類の悪魔が潜んでいる

労働市場に潜む悪魔

・マネー・マーケット(短期金融市場)に潜む悪魔

 

マネー・マーケットはお金を貸し借りする場所(お金の売買、為替取引ではない)

労働市場は労働者が自分の時間を貸している場所

 

起業家が借りる金額を決める判断基準とは

マネーマーケットを全体として見ると金利が低いほど借金のコストは下がり、起業家は多くのお金を借りられる

金利が高ければコストは上がり借り入れる金額は下がるはず

この理屈は間違っている

 

中央銀行金利の引き下げ→経営者は景気が悪いと捉える→雇用は減る

 

 

経済が社会の「エンジン」

借金が「燃料」

労働力はエンジンに点火するための「火花」

お金はエンジンを滑らかに動かし続けるための「潤滑油」

 

労働力とお金にはエンジンを動かす力がある一方、エンジンを止める力も、再起動を阻む力もある

 

不合理で矛盾した人間の振る舞いと、経済という機械をスムーズに動かしていくことを両立させるには、社会全体を考え直し、大幅につくりかえる必要がある

今はその大転換の最中

デジタル化と人工知能による機械化と自動化が社会を根本から変えている

 

 

 

 

 

 

第6章 恐るべき「機械」の呪い――自動化するほど苦しくなる矛盾

機械の台頭

 

起業家は生産を始める前に借金をせざるを得ず、生き延びるために利益が必要になった

利益を生み出すには顧客を獲得しなければならない

顧客獲得のために製品の値段を下げる

値段を下げるために多くの製品を生産し続けなければならない

 

テクノロジーの発明がこの生存競争に役立つとわかり、利用されるようになった

 

市場社会では利益追求と企業競争が目的となったため、テクノロジーが欠かせないものとなった

 

・機械によってこれから格差や貧困や不安がなくなっていくのか

→世界は逆の方向に向かっている

我々の生活はますますストレスの大きなものになっている

人間は機械を維持するために必死に働いている

 

18世紀の蒸気機関から現代のロボットまで新しいテクノロジーが登場するにつれ、製造工程から人間の労働力はしめだされてきた

 

自動化を支えるのは利益で、価格がコストを上回らなければ利益は蓄積されない

 

問題は3つの力が価格をコスト以下に押し下げること

「自動化」でコストが下がる

コストが下がっても企業同士の「競争」によって価格はそのコストを上回らなくなる→利益は最低限にとどまる

工場のロボットは製造に役立つが製品を買うことはない→「需要」が下がる

 

自動化が進んでいる現代は事業が成り立たないほど価格が下がる可能性が高まっている

 

・人間にしかできない仕事が新しく生まれるのか

社会の仕組みが変わらず利益をひと握りの人たちが独占し続けるとすれば新しい仕事は生まれない

いまの世界はテクノロジーを手に入れたものが自分の利益と権力のためにそれを使っている

 

経営者の夢はどの企業よりも先に労働者をロボットに置き換えて利益と力を独占し、ライバル企業の労働者に製品を売りつけること

 

・機械化が進んでそれが危機を引き起こし失業する状態を防ぐのは誰なのか

2つの希望

人間性の喪失や労働力の安売りに抗う無限の力が人間にはある

②災いと福は対になっているという経験的な知識

経済危機は人間の労働力が安くなり生き残った企業が失業者を雇い入れる

経済危機は回復の前触れであり、回復は経済危機の前触れ

 

・全ての人に恩恵をもたらす機械の使い方とは

機械を共同所有することで機械が生み出す富を全ての人に分配する

機械の奴隷ではなく機械の主人になれるような社会を作るほかない

それができないのは機械や土地やオフィスや銀行を所有する権力者が反対するから

 

 

 

 

第7章 誰にも管理されない「新しいお金」――収容所のタバコとビットコインのファンタジー

経済の血液であるお金について

 

通貨の購買力は生産コストとは関係なく相対的な希少性または潤沢さによって決まる

通貨は信頼がなければ機能しない

ものに対して貨幣の量が相対的に減ると物価が下がる=デフレ

貨幣量が増えると物価が上がる=インフレ

 

通貨の総量の変化をどう予測するかが金利に影響を与える

 

経済の借金のコスト、つまり金利は物価の予測に左右される

インフレに向かうかデフレに向かうかの予測で変わる

 

税金は余剰を公平に分配すべきだという運動が広がり多くの人に恩恵をもたらすために税金が使われるようになった

・誰が税金を払うのか

金持ちは税金を払いたがらず、貧乏人には十分なお金がない

方法1、国債を発行する=公的債務を負う

方法2、中央銀行などで多くの貨幣を作り国家の財源にしたり金融機関の資金にする

どちらも欠点がある

・政治家は公的債務が増えるのを嫌がる(政敵から未来の子供に負担を押し付けてると責められるから)

・金持ちは新しく貨幣を作るやり方を嫌がる(通貨の量が増えると通貨の価値が下がり、購買力が落ちるから)

 

 

いまの経済はどこからともなくお金を生み出す

公的債務は「機械の中の幽霊」

公的債務は経済の仕組みを支えるインフラ建設の財源になり、不況の時は回復を刺激し、銀行に「流動的な資産」を与えて全てを結びつけるゴムバンドになる

一方で

国家は公的債務を返済するために税金をさらに徴収しなければならない

 

市場社会では債務と税金がマネーサプライと結びついている

経済発展した民主主義国家は表向きでは中央銀行は独立していることになっている

実際は中央銀行は政治家の影響や干渉を受ける

中央銀行が独立したら中立的な存在にはならず一部の権力者の恣意で動かされるようになる

 

中央で統制する人がいない物理的な形を持たないデジタル通貨の構想が生まれた

分散型デジタル通貨「ビットコイン」が2008年に登場した

取引の監視は全員ですることで正当性を担保

 

仮想通貨の弱点

危機が起きた時にマネーの流通量を調整できないこと

誰もマネーサプライに介入できないことが前提のシステムのため

 

ビットコインの総量はアルゴリズムによって決まる

ここに問題がある

総量が決まっていることで危機が起きやすくなる

さらに危機が起きたら和らげるのが難しくなる

 

総量が決まるとなぜ危機が起きやすいのか→デフレ効果

(生産量の増加、総量の決まっているコインの希少性が上がり価値が高まる、物の値段が一律に下がり価格デフレが起こる、物価より賃金が早いペースで下がる、ものは増えるが変えるものは少なくなる、売り上げ減少、金融危機の発生)

 

 

第8章 人は地球の「ウイルス」か?――宿主を破壊する市場のシステム

 

人間は環境を破壊している

(動植物を絶滅に導き、森林の3分の2を破壊し、酸性雨を降らせ、土壌を腐らせ、大気に二酸化炭素を充満させ、海を酸性化してサンゴを殺し、氷河を溶かし、海面を上昇させ、環境を不安定にし、人類全体を危険にさらしている)

 

交換価値が経験価値を打ち負かすようになって、市場社会が生まれた

市場社会は機械による大量生産を生み出し、製品の量を増やす一方で、労働者と従業員を機械の奴隷にしてきた

さらに市場社会は種としての人類を、地球と衝突させてしまった

 

自然災害はわれわれの心を沈めるが、経済の観点から見ると、市場社会は反対に活気づく

山火事は経済の追い風になる

森林は経験価値があるが交換価値はゼロ

 

交換価値をすべてに優先させる社会は、環境保護を軽視するようになる

利益追求がすべての人間の原動力だと考えられるようになったのは比較的最近のこと

 

利益を追い求める多国籍企業は、交換価値が得られる限り地球を汚染し、地球から搾取し続ける

市場社会は人間をそのような節度のない愚か者にしてしまう

 

 

・人間と地球を救うには

→市場社会では認められない経験価値をもう一度尊重できるような社会にする

 ひとつのやり方は、利益追求に制限をかけること

 

・どうしたら人が地球の資源に責任を持ち、それを社会に欠かせないものと考えられるようになるだろう

→森や大気を分割する

 アップルやフォードといった巨大企業のように「株券」のようなものを発行し、所有株数に応じて資源から生まれる利益を分割すればいい

 

自然の商品化は理論上の話ではない

少数ではあるが、政府や企業に支持され、すでに実践されている

例)企業に炭素の排出権を与え、その権利を取引できるようにした

 

権力者が環境の民営化を勧めるのは、政府にクビを突っ込まれるのがいやだから

所有権を脅かされたり、彼らが支配しているプロセスが民主化されると困るから

 

理性あるまともな社会は、通貨とテクノロジーの管理を民主化するだけでなく、地球の資源と生態系の管理も民主化しなければならない

 

人間は温室効果ガスの排出を大幅に減らすか、極地の氷河を解けるにまかせておくか、どちらかの選択を迫られている

 

民主主義は不完全で腐敗しやすいが、人類全体が愚かな行動をしないための、ただひとつの方策であることには変わりない

 

 

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